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決算書では分からない儲け(必要利益)を知ることが健全経営への第一歩
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1.経営はこんなに単純な循環活動
一般的に経営は次のような単純な循環活動です。
受注→材料仕入→製品加工→製品販売→売上代金回収→材料・経費など支払
実際には手形などが介在しますので、売上代金回収と支払いの順番が逆になる場合があります。
また、業種によっては(建設業など)売上代金の一部が最初と途中で回収できる場合もあります。
経営循環活動の結果、期待されるものが利益です。
経営がすべてこの単純な循環で完結するという前提条件の下であるならば、経営の目的は利益を獲得することとなります。
さらに、経営規模の拡大が全く行われなかったとしても、継続して利益が獲得できれば、基本的に会社は存続し続けます。
2.健全な経営循環のために避けられない要因
現実の経営は前述のような単純な循環にとどまりません。健全な循環を繰り返すために、必要ではあるが、同時に避けられない要因として次のものが挙げられます。
- 市場競争
- 顧客からの値下げおよび値引き要請
- 新製品の開発
- 新規顧客の開拓
- 既存顧客との取引拡大
- 社員教育
- 広告宣伝などの販売対策
- 設備投資
などですが
どれもコスト上昇要因となり、良くも悪くも経営に重大な影響を与えます。
もちろん、伴って経営規模が拡大するか、合理化によりコスト吸収が可能であれば、相変わらず利益を獲得し続けることができます。
しかし、どれかひとつでも上手くいかない場合は、利益を減少させる結果になります。
またいくつか複合して上手くいかないか、何かひとつでも突出して悪影響を与えた場合、たちどころに赤字経営に陥ってしまいます。
経営循環活動も、コスト上昇要因もすべて、自己資金の範囲で賄われているのであれば、1回の失敗が経営に与える影響は、軽微にとどまる可能性があります。
ところが、ここに借入金という要因が加わると、経営は非常に深刻な要素を抱えることになります。
3.借入金の発生が経営に与える影響
たとえば設備投資などで借入金が発生すると、経営循環の流れは次のようになります。
受注→材料仕入→製品加工→製品販売→売上代金回収→材料・経費など支払
→(借入金返済)
ここで、売上高、仕入高、経費、減価償却費が全て同じであると仮定した場合、借入金の発生により減少する決算書上の利益は、借入金の支払利息相当分になります。
しかし、支払利息の負担以上に問題となるのは借入金元金返済分は獲得した利益の中から支払われる
ということです。
もし、利益の中から元金返済ができなくなると、手持ち現・預金に余裕があれば預金などを取り崩すことになるか、運転資金を借入しないと経営が立ち行かなくなります。
これが続くと黒字であっても、資金繰りに追われる自転車操業に向かう経営となります。
4.納税が経営に与える影響
一年間の経営活動の結果、決算書上の利益が黒字になっていれば、獲得した利益の中から税金を支払うことになります。
この場合経営循環の流れは次のようになります。
受注→材料仕入→製品加工→製品販売→売上代金回収→材料・経費など支払
→(借入金返済+納税)
これも、借入金の返済と同様に利益の中から納税できないと、預金などを取り崩すことになるか、納税資金を借入することになり、黒字でありながら手許資金(手許現金)は減少してしまいます。
5.減価償却が経営に与える影響
固定資産を購入すると、資産ごとに法定償却年数に応じて減価償却費を計上します。
自己資金であっても借入による購入であっても、現金の支出は購入の時だけです。その後毎年減価償却費を計上しても、現金支出は伴いません。
損益計算書で現金支出を伴わない経費として計上されるので、決算書上の利益より余分に現金が残っていることになります。
ここまでの経営循環の流れは次のようになります。
受注→材料仕入→製品加工→製品販売→売上代金回収→材料・経費など支払
→(借入金返済+納税−減価償却費)
6.経営の目的はただ利益を獲得することではない
今までのことから、黒字だから会社の存続が保証されているという考え方が、大きな間違いであることを示してくれました。
会社を存続させるためには、次のような経営結果になっていなければなりません。
必要な利益 >(借入金元金返済額+納税額−減価償却費)
これが、経営循環の結果獲得しなければならないほんとうに必要な利益、つまり儲けです。
さらに、配当金や役員賞与を支払うのであれば、その額を加えた利益の額を獲得しなければならないのは、言うまでもありません。
実は、必要な利益=儲けがないと、会社の自己資本(比率)が減少します。つまり儲けるとは「自己資本を増加する」ことに他ならないのです。
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