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1.借入金限度額を銀行の融資限度額から考える
ほとんどの中小企業は、借入金をして事業をしていると思います。
理想は無借金経営でしょうが
やはり中小企業のほとんどは、借入金に依存せざるを得ない状態です。
となれば、経営者にとって
・借入金は限度額の範囲内にあるのか、どうか?
・銀行は、あとどれくらい融資してくれるのだろうか?
当然気になる問題であると思います。
融資する銀行の立場から見れば
借入金限度額は、当然ですが融資限度額と言うことになります。
それでは、銀行はどんな基準で融資限度額を決めているのでしょうか。
単純に限度額を決めるのではなく、いくつか複合して判断しているようです。
2.借入金月商倍率
借入金月商倍率は
長期借入金・短期借入金・割引手形の合計額を月平均の売上高で割ったもの。
借入金月商倍率=(長期借入金+短期借入金+割引手形)÷月平均売上高
例えば
長期借入金・短期借入金・割引手形の合計額が3千万円、
平均売上高が1千万円ならば
借入金月商倍率は3ヶ月と言うことになります。
業種によってですが、この数値が
3ヶ月以下を一つの基準とし、
6ヶ月以上になると融資姿勢が慎重になるようです。
あくまでおおよそですが
借入金の限度計算の倍率が
6倍:危険、3倍:注意、1.5倍:良
と言うところでしょうか。
しかし、借入金月商倍率はあまりにも大雑把で、根拠に乏しいと思います。
現実には3倍でも、資金繰りの苦しい会社もあれば
年間売上高以上の借入金があっても、存続している会社もあります。
3.借入限界点
借入限界点は
支払利息負担利益を求めて、金利で割って求めます。
支払利息負担利益=(営業利益+受取利息+減価償却費)
借入限界点=支払利息負担利益÷金利
となります。
しかし、これも現実的とは、到底思えません。
例えば先程と同様に
月平均売上高が1千万円、年間売上高が1億2千万円の会社が
営業利益と受取利息で500万円
減価償却費が200万円
金利が4%
だったとしましょう。
さて上記の場合、
支払利息負担利益=(営業利益+受取利息+減価償却費)ですから
=500万円+200万円=700万円
借入限界点=支払利息負担利益÷金利ですから
=700万円÷4%
=1億7500万円
となってしまいます。
年間売上高が1億2千万円の会社が1億7500万円の借り入れが可能ですか?
だから、借入限界点もあまり現実的な融資限度額
あるいは、借入金限度額と言えないように思います。
4.支払利息対売上総利益率
支払利息対売上総利益率から、金利負担の程度により判断するものです。
支払利息対売上総利益率=(支払利息+割引料−受取利息)÷売上総利益
この数値も
20%:危険、10%:要注意、5%:良
のような基準があるようです。
仮に先程の会社が
支払利息+割引料−受取利息=200万円
売上総利益率が30%、つまり売上総利益が3千600万円の場合
支払利息対売上総利益率=200万円÷3千600万円≒5,56%
逆算すれば
3千600万円×20%=720万円となり
支払利息がこれ以下ならば何とか大丈夫と言うことなのでしょうか?
現実には、720万円の支払利息があり、金利が4%ならば
支払利息÷4%=1億8千万円の借入金残高があることになり
もう、危険どころか破綻しているはずです。
だから、支払利息対売上総利益率も、
あまり現実的な融資限度額あるいは、借入金限度額と言えないように思います。
5.借入金限度額は借入金元金返済額の大きさで決まる
もっとも現実な借入金限度額は、中小企業の黄金公式により求めるしかないと思います。
つまり、決算書の損益計算書の税引後当期利益と減価償却費の合計額で
1年間の長期借入金の元金返済額をまかなうことができるかどうか
ということなのです。
借入金元金返済額≦(必要利益−納税額+減価償却費)ですね。
借入金限度額と言うのは、借入金元金返済額の大きさで決まってくるのです。
それでも、銀行や信用保証協会からすれば、
この基準をまっとうに適用してしまえば、貸出先がなくなってしまうのでしょう。
だから、借入金月商倍率、借入限界点、支払利息対売上総利益率などが
後付けで出て来たのではないかと、勝手に想像します。
企業も銀行も持ちつ持たれつの関係なのでどこかで曖昧になり定性分析に、
いい訳を見出したりすることでますます資金繰りの悪化を招き、
お互いにニッチモサッチモ行かない状態になってしまっているのでしょうか。
借入金の問題や、資金繰りの問題を対処療法的に扱うだけでは
健全経営への道は拓かれていないと思います。
やはり、基本に立ちかえ入り
@経営戦略を立案し
A管理会計を導入し
B日々仮説と検証を繰り返す。
これが、中小企業経営の王道ではないかと考えます。
借入金限度額を超えた経営は、いつも資金繰りに追われ危険な状態ですが
特別な予算作成プログラム【ここをクリック】で、自社の健全な状態を把握しておくことが必要です。
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