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1.予算作成は損益計算書を変動損益計算書に置き換える
予算作成は、前期損益計算書を変動損益計算書に置き換えることから始めます。
変動損益計算書を作成するにあたり
損益計算書の費用を、変動費と固定費に分ける必要があります。
費用のうち変動費と固定費の二つの性格を持つものがあります。
例えば、電気料金などは基本料金が固定費で、使用料金が変動費
給料も基本給は固定費、残業代は変動費
などと分解しても良いのですが、煩雑な割にそれほど意味がないので
材料仕入れ、外注費、部品購入費、資材費、商品仕入を変動費とし、
その他はすべて固定費とする簡便法をお勧めいたします。
ところで、変動損益計算書はエクセルで作成しますが
損益計算書の費用科目にフラグを立てて(変動費はV、固定費はFなど)
SUMIF関数を用いれば一発で集計できます。
エクセル関数が苦手であったり、面倒ならば
簡単に変動損益計算書が作成できるプログラム【ここをクリック】をお使いください。
2.必要利益を算出する
予算の目的の一つは必要利益の獲得ですから、当然、必要利益を算出する必要があります。
必要利益を獲得するとは
【必要利益>借入金返済額+納税額−減価償却費】
になる状態を意味しています。
もし、必要利益を獲得できないと
資金繰りに苦しみ、自己資本を低下させる経営になってしまいます。
必要利益を獲得できない予算は、全く意味がありません。
いわゆる、損益分岐点売上高を達成するだけでは、資金繰りは悪化してしまいます。
必要利益を獲得できる必要売上高のことを、資金繰り分岐点売上高と言いますが、
資金繰り分岐点売上高を、予算の最低目標として位置付けることが
とても重要なことなのです。
3.変動損益計算書を基本に概略予算を作成する
最低限必要利益を満たす概略予算を作成します。
概略予算は
1)売上高
2)変動費
3)固定費
がどのようになれば、
自社の必要利益を獲得できるのか、シミュレーションを繰り返します。
さて、概略予算作成にあたり
売上高・変動費・固定費を単純に前年比○○%増とか、○○円増で決定するのは、
あまり好ましい方法ではありません。
と言うか、考え方が完全に間違えています。
そこで、概略予算作成の要素について説明します。
1)数量増減
受注数・販売数増減ですが、変動費はこれに連動して増減します。
これだけは、変動比率は一定で、限界利益率も変わりません。
2)販売価格増減・改定(値上げ・値下げ)
販売価格の増減は、受注数・販売数に大きく影響します。
また、増減率に応じで、変動比率が変わり、限界利益率が増減します。
3)変動費価格(仕入単価や外注単価など)の増減
変動費価格の増減は、変動比率が変化するので、限界利益率も増減します。
4)客単価の増減
この増減は、変動比率が変化するので、限界利益率も増減します。
なお、客単価を予算化する場合は、
顧客数・購入頻度を把握しておく必要があります。
つまり、
売上高=顧客数×平均単価×購入頻度(来店頻度)と言うことです。
5)固定費の増減
概略予算ですから、大雑把な固定費の増減を決定します。
固定費の増減は、限界利益と無関係です。
経常利益だけが変化することになります。
以上を繰り返しシミュレーションして
必ず
【必要利益>借入金返済額+納税額−減価償却費】
になるような概略予算を作成します。
4.本予算と予算実績対比損益計算書を作成する
必要利益を獲得できる概略予算が作成出来たら、科目別の本予算を作成します。
この段階で、はじめて詳細予算の作成が可能になりますが
概略予算で確定した必要利益を、下方修正することは避けるべきです。
予算実績対比の目的は
科目別予算の進捗状況を管理し、経営戦略の実行度合いを数値で把握します。
予算に遅れが生じていれば、その原因を探り速やかに対策を講じます。
仮説と検証により、経営戦略の点検と見直しが必要な場合があるかも知れません。
予算は絵に描いた餅に過ぎません。
予算は予算実績対比により実現可能となり、必要利益の獲得につながります。
5.原価計算のための加工単価と販売管理費割当額の算出
予算作成の上で見逃されているのが、加工単価と販売管理費割当額の算出です。
必要利益獲得は、取りも直さず、それぞれの製品の利益の集積で成り立っています。
原価計算を実施した結果決定された販売価格は、
必ず必要利益を満たしていることが望ましいのです。
もちろん、戦略的に利益率の高い製品、利益率の薄い製品を組み合わせて、
販売戦略を構築する場合もありますが、だからこそ、より原価計算が重要となります。
原価計算は、
加工単価と販売管理費割当額の算出なしには不可能です。
6.経営計画の策定
予算作成はここで終わりではありません。
より詳細に、そして戦略をより具体化したものとして経営計画を策定します。
予算は、部門別や店舗別予算、商品別販売数量予算、あるいは担当者別予算
として経営計画に落とし込んで行きます。
また、経営戦略も具体的に経営計画に落とし込んで行きます。
そして、それぞれの進捗状況を厳しく管理し、必要利益の獲得に全力を傾注します。
これこそが健全経営への道であると言えるでしょう。
付け加えますが、
予算は、経営戦略と一体であることは、言うまでもありません。
予算の作成は、必要利益獲得と自己資本向上のための出発点となります。
予算作成プログラム【ここをクリック】なしでは、健全経営への道は閉ざされたままです。
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